目次
納品が終わってほっとしたのもつかの間、「請求書をお送りください」と言われて手が止まってしまった……という経験はありませんか?
この記事では、個人クリエイターが請求書を作るときに必要な項目と、インボイス制度の基本を解説します。2026年は、インボイス制度の負担軽減策「2割特例」が終わる年でもあります。登録している方・登録を迷っている方が知っておきたい変更点もあわせて整理しました。
この記事は2026年10月12日時点の情報をもとに書いています。税制は毎年のように改正されるため、最新の情報は国税庁のWebサイトで確認してください。ご自身の状況にあてはめた判断は、税務署や税理士にご相談ください。
請求書に書く基本の項目
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 宛名 | 依頼者の会社名・担当者名 |
| 発行日・請求番号 | 発行した日と、管理用の番号 |
| 件名 | 「○○キャラクター立ち絵制作」など、見積書と同じ件名 |
| 明細 | 品目・数量・単価・金額(見積書と同じ内容) |
| 小計・消費税・合計 | 税抜の小計、消費税額(税率ごと)、税込の合計 |
| 源泉徴収税額 | 源泉徴収がある場合は、差し引く税額と差引後の振込額 |
| お支払期日 | 「2026年11月30日」のように日付で書く |
| 振込先 | 銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義 |
| 発行者 | 名前(活動名・屋号)、住所、連絡先、登録番号(インボイス発行事業者の場合) |
見積書を出していた場合は、見積書と同じ件名・明細にしておくと、依頼者側の確認がスムーズです。見積書の書き方は見積書の書き方とテンプレートで解説しています。
インボイス(適格請求書)に必要な項目
インボイス発行事業者として登録している場合、取引先に渡す請求書は「適格請求書(インボイス)」の要件を満たす必要があります。国税庁の案内では、次の項目が必要とされています。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目があればその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)と、適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
イラストや作曲などの制作の報酬は、通常は標準税率(10%)のみです。消費税額の端数処理は、1枚のインボイスにつき、税率ごとに1回行います(明細の行ごとに端数処理をして合計するのは認められていません)。
請求書テンプレート(インボイス対応・源泉徴収あり)
企業からの依頼で、イラストの報酬64,000円(税抜)を請求する例です。
請求書
株式会社○○ 御中
発行日:2026年11月10日
請求番号:2026-11-001
登録番号:T1234567890123
件名:オリジナルキャラクター立ち絵制作
下記のとおりご請求申し上げます。
| 取引日 | 品目 | 数量 | 単価 | 金額 |
| ----------- | -------------------------- | ---- | -------- | -------- |
| 2026/11/10 | キャラクター立ち絵(全身) | 1 | 50,000円 | 50,000円 |
| 2026/11/10 | 表情差分 | 3 | 3,000円 | 9,000円 |
| 2026/11/10 | PSDデータ納品 | 1 | 5,000円 | 5,000円 |
小計(10%対象・税抜):64,000円
消費税(10%):6,400円
合計(税込):70,400円
源泉徴収税額:−6,534円
ご請求金額(お振込金額):63,866円
お支払期日:2026年11月30日
お振込先:○○銀行 ○○支店 普通 1234567 ○○○○
発行者:○○○○(活動名)
住所:○○県○○市……
メール:example@example.com
※ 金額は例です。源泉徴収税額は「税抜の報酬額64,000円 × 10.21% = 6,534円(1円未満切り捨て)」で計算しています。
この計算は、無料の見積書・請求書ジェネレーターでも自動でできます。登録番号を入れればインボイスの項目もそろい、そのままPDFで保存できます。
源泉徴収の考え方
イラスト(さし絵)・デザイン・作曲・原稿などの報酬を企業が個人に支払う場合、支払う側が所得税を差し引いて納めることになっています。税率は、1回の支払額が100万円以下の部分は10.21%です。
- 報酬と消費税をはっきり分けて書けば、消費税を除いた報酬額をもとに計算できるとされています
- 源泉徴収するかどうか、どう計算するかは支払う側が判断するものなので、事前に「源泉徴収はありますか?」と確認して、相手の処理に合わせると確実です
- 個人で依頼してくれた方への請求では、通常は源泉徴収はありません
インボイス制度:2026年に何が変わる?
- 2023年10月インボイス制度が始まる
- 2026年分まで2割特例(納める消費税が売上にかかる消費税の2割)
- 2027・2028年分3割特例(同じく3割)
- 2029年分から本則課税または簡易課税(簡易課税は事前の届出が必要)
2026年10月12日時点の国税庁の案内をもとにしています。特例には基準期間の課税売上高などの要件があります。
そもそもインボイス制度とは
2023年10月に始まった制度で、取引先(課税事業者)が仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)ためには、原則としてインボイスが必要になりました。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」だけです。
登録すると、それまで消費税を納めていなかった免税事業者も、消費税を納める側(課税事業者)になります。
1. 「2割特例」は2026年分で終了
免税事業者から登録した事業者は、納める消費税を「売上にかかる消費税の2割」にできる「2割特例」を使えました。国税庁の案内では、この特例は2026年(令和8年)9月30日を含む課税期間までとされています。個人事業者は暦年が課税期間なので、2026年分の申告(2027年3月)が最後になります。
2. 個人事業者向けに「3割特例」ができた
令和8年度の税制改正で、個人事業者向けに新しく「3割特例」が設けられました。国税庁の案内によると、内容は次のとおりです。
- 対象:インボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった個人事業者(法人は対象外)
- 適用期間:2027年分・2028年分(令和9年分・令和10年分)の消費税の申告
- 内容:納める消費税を売上にかかる消費税の3割にできる
- 主な要件:基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること など
2割特例より負担は増えますが、急に本来の計算(本則課税)や簡易課税に移るよりは、ゆるやかな変化になります。
例:報酬(税抜)が年間300万円の場合の、納める消費税の目安
| 年 | 計算 | 納める消費税の目安 |
|---|---|---|
| 2026年分(2割特例) | 30万円 × 20% | 6万円 |
| 2027・2028年分(3割特例) | 30万円 × 30% | 9万円 |
※ 売上にかかる消費税を30万円(300万円×10%)とした単純な計算です。実際の税額は売上の内容や計算方法によって変わります。
3割特例の期間が終わったあとは、本則課税または簡易課税で計算することになります。簡易課税を使うには、事前に届出が必要です。早めに会計ソフトや税理士に相談して、どちらが有利かを確認しておきましょう。
3. 取引先の「経過措置」も変わった
免税事業者に依頼している取引先は、インボイスがなくても、一定の割合で仕入税額控除ができる経過措置を使えます。この割合も令和8年度の改正で見直され、国税庁の案内では次のようになっています。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 0%(控除できない) |
免税事業者のクリエイターにとっては、取引先の負担が少しずつ増えていくことを意味します。企業との取引が多い方は、今後、取引先から登録について相談される可能性もあります。
インボイスに登録すべき? 判断のめやす
登録するかどうかは、誰と取引しているかによって変わります。
| あなたの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 依頼の多くが個人(ファン)から | 個人はインボイスを必要としないため、登録しなくても影響は小さい |
| 企業からの依頼が多い | 取引先がインボイスを求めることがある。登録しないと、取引条件の相談や見直しを持ちかけられる可能性がある |
| 売上が年1,000万円を超えている | もともと課税事業者なので、登録して困ることは少ない |
迷ったら、主な取引先に「インボイスが必要かどうか」を確認してみるのがおすすめです。登録すると消費税の申告と納税が必要になるので、手取りへの影響を計算したうえで判断しましょう。
請求書を出したあとにやること
請求書を出して終わりにせず、入金の確認までをセットにしましょう。
- 請求書を出した日・支払期日を記録する
- 支払期日に入金を確認する(源泉徴収があれば差引後の金額で確認)
- 期日を過ぎても入金がなければ、早めに確認の連絡をする(報酬の支払いが遅れたときの対処法)
- 請求書の控えは、確定申告のために保存しておく
Citrushub CRM では、案件ごとに金額と支払期日を登録しておくと、支払期日を過ぎても入金されていない案件をダッシュボードの最初の画面でお知らせします。「納品済み(入金待ち)」の件数と金額、今月の入金額も自動で集計されるので、入金の確認漏れを防げます。
※ Citrushub CRMには、現在のところ請求書の作成機能はありません。請求書の作成には会計ソフトや請求書作成サービス、無料の見積書・請求書ジェネレーターとあわせてご利用ください。
まとめ
- 請求書には、件名・明細・税抜金額と消費税額・支払期日・振込先を書く
- インボイス発行事業者は、登録番号と税率ごとの消費税額などの記載が必要
- 企業案件では源泉徴収(10.21%)が差し引かれることがある。事前に確認を
- 2割特例は2026年分で終了。個人事業者は2027・2028年分に3割特例を使える
- 免税事業者からの仕入れの経過措置は、2026年10月から70%に

