目次
依頼や作品の販売で収入が出てきたら、避けて通れないのが確定申告です。そして確定申告で手取りを大きく左右するのが「経費」。
「液タブは経費にできる?」「配信用の部屋の家賃は?」「推し活の費用は……?」など、クリエイターならではの迷いも多いはずです。
この記事では、個人クリエイターが経費にできるものの考え方と具体例、注意が必要なポイントを解説します。
この記事は2026年10月12日時点の情報をもとにした一般的な解説です。2026年分(2027年に申告する分)を前提にしています。税制は毎年のように改正されるため、最新の情報は国税庁のWebサイトで確認し、個別の判断は税務署や税理士にご相談ください。
経費にできるかどうかの基本ルール
経費(必要経費)にできるのは、収入を得るために直接必要だった支出です。判断に迷ったら、次の2つを自分に問いかけてみましょう。
- その支出は、仕事(作品づくり・依頼・発信)のためのものか?
- 税務署に聞かれたときに、仕事との関係を説明できるか?
プライベートと仕事の両方で使うものは、仕事で使った割合だけを経費にします(家事按分)。そして、どんな支出も領収書やレシート、利用明細を保存しておくことが前提です。
クリエイターが経費にできるものの例
| 勘定科目の例 | 具体例 |
|---|---|
| 消耗品費 | ペンタブのペン先、画材、ケーブル、マウス、10万円未満のソフトや機材 |
| 減価償却費 | パソコン、液晶タブレット、カメラ、オーディオインターフェースなど高額な機材(下で詳しく説明) |
| 通信費 | インターネット回線、スマホ代(仕事で使う割合)、サーバー・ドメイン代 |
| 支払手数料 | 依頼サイト・販売サイトの手数料、決済手数料、振込手数料 |
| 外注費 | 背景・MIX・動画編集・Live2Dなどを他のクリエイターに依頼した費用 |
| 新聞図書費 | 資料用の書籍、ポーズ集、技法書、資料用の動画配信サービス |
| 研修費 | 有料の講座、セミナー、オンラインスクール |
| 広告宣伝費 | SNS広告、名刺、ポートフォリオサイトの費用、イベント用のチラシ |
| 旅費交通費 | 打ち合わせや取材、イベント出展のための交通費・宿泊費 |
| 地代家賃・水道光熱費 | 自宅を仕事場にしている場合の家賃・電気代(仕事で使う割合) |
| 支払利用料・ソフトウェア | イラスト・作曲・動画編集ソフトのサブスクリプション、フォントや素材サイトの利用料 |
| 荷造運賃 | グッズや納品物の発送費 |
| 会議費・接待交際費 | 仕事の打ち合わせでの飲食代など |
勘定科目の名前は、自分でわかりやすいものにしてかまいません。大切なのは、毎年同じ考え方で分類することです。
家賃・電気代・スマホ代は「家事按分」する
自宅で作業している場合、家賃や電気代、インターネット代の一部を経費にできます。プライベートと仕事の両方で使っているものは、**仕事で使っている割合(按分割合)**を決めて、その分だけを経費にします。
按分の考え方の例
- 家賃:仕事部屋の面積 ÷ 家全体の面積(例:作業部屋が全体の25%なら、家賃の25%)
- 電気代:仕事をしている時間の割合(例:1日の使用時間のうち仕事の割合)
- スマホ・ネット代:仕事で使っている時間や用途の割合
按分割合に決まった数字はありません。「なぜその割合なのか」を説明できる根拠(間取り図、作業時間の記録など)を用意しておくことが大切です。
パソコンや液タブなど高額な機材の扱い
10万円以上する機材は、買った年に全額を経費にできるとは限りません。金額によって扱いが変わります。
| 購入金額(1個あたり) | 扱い |
|---|---|
| 10万円未満 | 買った年に全額を経費にできる(消耗品費) |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で均等に経費にできる(一括償却資産)※ |
| 青色申告で一定の条件を満たす場合 | 少額減価償却資産の特例で、買った年に全額を経費にできる(年間合計300万円まで) |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて、数年かけて経費にする(減価償却)。パソコンは4年など |
※ 10万円以上20万円未満の機材は、通常の減価償却を選ぶこともできます。
青色申告をしている個人事業主などが使える「少額減価償却資産の特例」は、令和8年度の税制改正で、2026年4月1日以後に取得したものから、対象が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も延長されました。高価な液タブやパソコンを買う予定があるなら、青色申告にしておくメリットは大きいといえます。
経費にするとき注意が必要なもの
資料代・エンタメ費
「アニメやゲームは作品づくりの資料だから全部経費」……と言いたくなりますが、プライベートで楽しむ目的と区別がつきにくい支出は注意が必要です。
- 経費にしやすい例:ファンアートの依頼のために買った原作の資料、レビュー動画のために購入したゲーム
- 説明が難しい例:特定の仕事と関係なく、趣味として楽しんでいる作品
仕事との関係を説明できるよう、「どの依頼・どの作品のための資料か」をメモしておくと安心です。
衣装・美容代(VTuber・コスプレイヤー・配信者)
撮影や配信のためだけに使う衣装・小道具は経費にしやすい一方、普段も着られる服や日常的な美容代は、プライベートとの区別が難しくなります。用途と、仕事で使った記録(撮影日や配信の記録など)を残しておきましょう。
推し活・イベント参加費
推しのイベントやライブへの参加は、基本的には私的な支出です。ただし、そのイベントで取材をして作品や記事にした、出展者として参加した、といった仕事との関係がはっきりしている場合は、その部分を経費にできる可能性があります。
副業クリエイターの「20万円ルール」
会社員などで給与をもらっていて、年末調整を受けている人は、副業の所得(収入から経費を引いた額)が年20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてもよいとされています。
ただし、次の点に注意しましょう。
- 20万円は「収入」ではなく「所得(収入 − 経費)」で判断する
- 所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は必要です(お住まいの市区町村に申告します)
- 源泉徴収された報酬がある場合は、確定申告をすると税金が戻ってくることがあります
- 医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も申告に含める必要があります
副業での時間の使い方や、住民税の納め方については副業クリエイターが本業と両立するコツで解説しています。
青色申告と白色申告の違い
個人事業主の確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。
| 青色申告 | 白色申告 | |
|---|---|---|
| 事前の届出 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
| 帳簿 | 複式簿記(65万円・55万円控除の場合) | 簡易な帳簿 |
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 赤字の繰り越し | 3年間繰り越せる | できない |
| 少額減価償却資産の特例 | 使える | 使えない |
2026年分の青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告する(または優良な電子帳簿保存を行う)などの条件を満たすと65万円、複式簿記で書面申告なら55万円、簡易な帳簿なら10万円です。なお、令和8年度の税制改正で、2027年分以後の青色申告特別控除の金額や要件が見直されています。次の年の記帳を始める前に、国税庁の案内を確認しておきましょう。
青色申告を始めるには、原則として青色申告をしたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署に出す必要があります。開業届とあわせて出すのがおすすめです。詳しくは開業届の出し方で解説しています。
2026年分の確定申告のスケジュール
2026年1月1日〜12月31日の所得についての確定申告は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。e-Taxなら自宅から申告できます。
- 2026年1月〜12月毎月、売上と経費をまとめて記録する(領収書も保存)
- 2026年12月31日1年分の所得(売上 − 経費)が決まる
- 2027年2月16日〜3月15日確定申告をする(e-Taxなら自宅から)
申告の時期になってから1年分のレシートを整理するのは大変です。毎月、売上と経費をまとめて記録しておく習慣をつけておくと、申告がぐっと楽になります。
売上の記録は「案件」とセットで残す
確定申告では、経費だけでなく売上も正しく記録する必要があります。依頼の報酬は、「いつ・誰から・いくら」入金されたかを記録しておきましょう。源泉徴収された報酬は、差し引かれた税額も一緒に記録しておくと、申告のときに困りません。
Citrushub CRM では、案件ごとに金額・入金日を記録でき、月ごとの受注額・入金額をダッシュボードで確認できます。どの依頼者からいくら入金されたかもすぐにわかるので、帳簿づけや確定申告の準備に役立ちます。作品を Citrushub Store で販売している場合は、注文の一覧をCSVで書き出して会計ソフトに取り込むこともできます。
まとめ
- 経費にできるのは、収入を得るために必要だった支出。説明できる根拠と領収書を残す
- 家賃・電気代・通信費は、仕事で使った割合で家事按分する
- 10万円以上の機材は扱いが変わる。青色申告なら40万円未満(2026年4月以後の取得分)の特例が使える
- 資料代・衣装・イベント参加費は、仕事との関係を記録しておく
- 副業で所得20万円以下でも、住民税の申告は必要
- 2026年分の確定申告は2027年2月16日〜3月15日

