生成AIの広がりとともに、「自分の作品が勝手に学習に使われていないか」「自分の絵柄そっくりの画像が出回ったらどうしよう」と不安を感じるクリエイターが増えています。
この記事では、文化庁が公表している「AIと著作権に関する考え方について」をもとに、クリエイターが知っておきたい基本と、今日からできる対策を整理します。
この記事は2026年10月12日時点の情報をもとにした一般的な解説です。生成AIと著作権をめぐる考え方や裁判例は、今後も変わっていく可能性があります。個別の事案については、弁護士などの専門家にご相談ください。
まず知っておきたい:「学習」と「生成・利用」は分けて考える
文化庁の整理では、生成AIと著作権の関係を、大きく次の2つの段階に分けて考えます。
| 段階 | 何をすること? | 著作権の考え方(概要) |
|---|---|---|
| 学習(開発)の段階 | 作品などのデータを集めてAIに学習させる | 一定の条件のもとで、権利者の許諾なく利用できる場合がある(著作権法第30条の4) |
| 生成・利用の段階 | AIで画像などを作り、公開・販売する | 通常の著作物と同じように、既存の作品との「類似性」「依拠性」があれば侵害になりうる |
学習の段階:著作権法第30条の4
著作権法第30条の4は、作品を「楽しむ(享受する)」ためではない利用、たとえば情報の解析などについて、原則として権利者の許諾なく利用できると定めています。AIの学習は、この規定の対象になりうるとされています。
ただし、文化庁の考え方では、次のような場合はこの規定が適用されない可能性があるとしています。
- 作品を「楽しむ」目的が一緒にある場合:たとえば、特定のクリエイターの作品の創作的な表現をそのまま出力させることを目的として、その人の作品だけを集めて追加で学習させるような場合
- 著作権者の利益を不当に害することになる場合
「作風(画風)」そのものは保護されない
文化庁の考え方では、作風や画風はアイデアにとどまり、それが似ているというだけでは著作権侵害にはならないと整理されています。著作権が守るのは、具体的な「表現」です。
一方で、作風が似ているだけでなく、特定の作品の創作的な表現と似ている画像が生成・公開された場合は、侵害にあたる可能性があります。
生成・利用の段階:似ている画像が出回ったら
AIで作られた画像であっても、既存の作品と似ていて(類似性)、その作品をもとにして作られた(依拠性)と認められれば、著作権侵害になりうるとされています。これは、人が描いた場合と基本的に同じ考え方です。
今日からできる5つの対策
法律だけで学習を完全に止めることは難しいのが現状です。そのため、できることを組み合わせて、リスクを下げることが大切です。
1. 規約に「AI学習の禁止」をはっきり書く
依頼の規約、販売する作品の利用規約、公式サイトのガイドラインに、生成AIの学習やAIへの入力を禁止することを書いておきましょう。
本サイトの作品を、生成AIの学習や、AIへの入力(読み込ませること)に利用することを禁止します。
すべての学習を止められるわけではありませんが、依頼者や購入者との契約として約束してもらえること、また自分の意思を明確に示しておけることに意味があります。規約の書き方は依頼の契約・利用規約で決めておくべきこと、デジタルコンテンツの売り方でも紹介しています。
2. 投稿するサービスの設定を確認する
SNSや作品投稿サイトの中には、AI学習への利用について設定を用意しているところや、規約でAI学習に関する方針を定めているところがあります。使っているサービスの設定と規約を一度確認してみましょう。
3. 公開する画像の解像度を抑える
高解像度の原画を公開する必要はありません。ポートフォリオやSNSには、見てもらうのに十分なサイズの画像を使いましょう。無断転載の対策にもなります。
4. サインや透かしを入れる
作品にサインや透かしを入れておくと、無断転載されたときに出どころがわかりやすくなります。AIの学習を防ぐ目的で、画像に特殊な加工を施すツールも登場しています。ただし効果には限界があるため、ほかの対策と組み合わせて使いましょう。
5. 自分の作品の「記録」を残す
制作途中のデータ(ラフ、レイヤー付きのファイル)や、公開した日時の記録を残しておくと、似た画像が出回ったときに自分が先に作ったことを示す材料になります。
似た画像や、自分の名前を使った画像を見つけたら
- 証拠を保存する画面のスクリーンショットを、URLと日時がわかるように残す
- プラットフォームに報告する多くのサービスには、権利侵害を報告する窓口がある
- 相談する判断が難しい場合は、弁護士などの専門家に
自分の作品そのものが無断で転載されている場合の対応は、無断転載を見つけたときの対応手順で詳しく解説しています。
また、自分の名前(活動名)を使って「○○風」の画像が販売されているなど、あなたと関係があるように見せかける使い方は、著作権とは別の問題になる場合もあります。
ファンに「本物」がどこにあるか伝える
生成AIで作られた似た画像が増えるほど、「このクリエイターの本物の作品はここで見られる」という場所の価値は高まります。
- 公式サイトに、作品とガイドライン(AI学習の禁止など)をまとめる
- SNSのプロフィールから、公式サイトに行けるようにしておく
- 依頼や販売の窓口を公式サイトに一本化して、なりすましと区別してもらう
Citrushub Site なら、lit.linkやSNSのURLを貼るだけで、作品とプロフィールをまとめた公式サイトの案をAIが作ります。ガイドラインのセクションも、ページの上で直接編集して追加できます。
まとめ
- 生成AIと著作権は「学習の段階」と「生成・利用の段階」に分けて考える
- 学習は第30条の4で原則として許諾なく行える場合があるが、特定のクリエイターの表現を出力させる目的の追加学習などは例外になりうる
- 作風・画風そのものは保護されないが、具体的な表現が似ていれば侵害になりうる
- 規約での禁止、サービスの設定、解像度・サイン、制作記録の保存を組み合わせて対策する
- 公式サイトで「本物の作品」と窓口を示しておく

