「依頼をお願いできますか?」というDMが届いたとき、うれしい気持ちと同時に「何を聞けばいい?」「いくらと言えばいい?」と手が止まってしまう方は多いはずです。
依頼の受け方に決まった正解はありませんが、流れを決めておくと、毎回迷わずに済み、トラブルもぐっと減ります。この記事では、イラスト・音楽・動画・Live2Dなど、個人クリエイターが制作依頼を受けるときの基本の流れを7つのステップにまとめました。そのまま使える返信テンプレートも載せています。
依頼を受ける前に準備しておきたい3つのこと
いきなり問い合わせが来ても慌てないよう、先に次の3つを用意しておきましょう。
1. 受けられる依頼の範囲を決める
- 受けるもの:アイコン、立ち絵、MV用イラスト、作曲、MIXなど
- 受けないもの:苦手なジャンル、R-18、実在人物、AI学習目的での利用 など
- 個人からの依頼と企業からの依頼の両方を受けるかどうか
「受けないもの」をはっきりさせておくと、断る理由を毎回考えなくて済みます。
2. 料金表と納期の目安を作る
「アイコン ○○円〜」「納期の目安:ご入金から3週間」程度の目安があるだけで、問い合わせの質が上がります。料金の決め方は依頼料金の決め方で詳しく解説しています。
3. 依頼の窓口と「ご依頼の前に」ページを用意する
SNSのDM・メール・依頼サイトなど、窓口がバラバラだと見落としが起きます。窓口はできるだけひとつにまとめ、次の内容を「ご依頼の前に」としてまとめておくのがおすすめです。
- 料金表と納期の目安
- 依頼の流れ(この記事の7ステップ)
- 支払い方法とタイミング(先払い/後払い)
- 修正(リテイク)の回数
- 作品の使い方のルール(個人利用・商用利用・SNSのアイコン利用など)
- 実績として公開してよいかどうか
依頼の基本の流れ【7ステップ】
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 問い合わせ | 依頼内容を受け取り、ヒアリングする | 1〜3日以内に返信 |
| 2. 見積もり | 金額・納期・条件を提示する | ヒアリング後すぐ |
| 3. 受注(合意) | 条件に合意してもらい、記録に残す | ― |
| 4. 支払い(先払いの場合) | 入金を確認してから制作に入る | ― |
| 5. 制作・途中確認 | ラフなど節目で確認してもらう | 案件による |
| 6. 納品 | データを納品し、受け取りを確認してもらう | 納期まで |
| 7. 入金確認・お礼 | 入金を確認し、お礼を伝える | 支払期日まで |
ひとつずつ見ていきましょう。
ステップ1:問い合わせを受けてヒアリングする
最初の返信では、引き受けるかどうかを決めるために必要な情報を聞きます。何度も往復しなくていいよう、聞きたいことは1通にまとめて送りましょう。
ヒアリングで聞くこと
- 依頼内容(何を・どのくらい)
- 用途(個人で楽しむ、配信で使う、グッズにする、広告に使う など)
- 希望の納期
- ご予算
- 参考資料(キャラクターの設定画、イメージに近い作品など)
- 依頼者が個人か法人か(請求書の要否にかかわります)
返信テンプレート
○○様
お問い合わせいただきありがとうございます。△△と申します。 ご依頼について検討させていただきたく、以下をお教えいただけますでしょうか。
- ご依頼内容(例:バストアップのアイコン1点)
- ご用途(例:配信用アイコン、グッズ化の予定あり など)
- ご希望の納期
- ご予算
- 参考資料(キャラクターの設定画など)
内容を確認のうえ、お見積もりをお送りいたします。 よろしくお願いいたします。
用途を聞くのは、料金と権利の範囲が用途によって変わるからです。同じイラストでも、SNSのアイコンに使う場合とグッズにして販売する場合では、依頼者が得る価値も、あなたが許可する範囲も違います。
ステップ2:見積もりを出す
ヒアリングした内容をもとに、金額と条件を提示します。口頭(DM)で「○○円です」と伝えるだけでもかまいませんが、次の項目はすべて文字で残しておくのが安心です。
- 金額(税込か税抜か)
- 納期(いつまでに何を納めるか)
- 納品形式(PNG/PSD、サイズ、解像度など)
- 修正の回数と範囲(「ラフ段階で2回まで」など)
- 支払い方法と支払期日
- 使ってよい範囲(個人利用のみ/商用利用可 など)と、実績として公開する時期
企業からの依頼なら見積書を作ると話がスムーズです。書き方は見積書の書き方とテンプレートを、すぐに作りたいときは無料の見積書・請求書ジェネレーターを使ってください。
ステップ3:受注する(条件に合意してもらう)
依頼者から「この内容でお願いします」と返事が来たら受注です。ここで大切なのは、合意した条件を1か所に残しておくことです。
DMの流れの中で条件が少しずつ変わると、あとから「最初の話と違う」というすれ違いが起きやすくなります。最終的な条件を1通にまとめて送り、「この内容で承りました」と確認しておきましょう。
ご依頼ありがとうございます。以下の内容で承りました。
- ご依頼内容:バストアップのアイコン1点(背景なし)
- 金額:○○円(税込)
- 納期:○月○日
- 修正:ラフ段階で2回まで無料
- お支払い:○月○日までに銀行振込(先払い)
- ご利用範囲:配信・SNSでのご利用(グッズ化は別途ご相談)
ご入金を確認次第、制作を開始いたします。
企業から依頼を受ける場合、発注側には取引条件を書面やメールなどで示す義務があります(フリーランス・事業者間取引適正化等法)。発注書や条件のメールが届いたら、内容が上の項目と一致しているか確認しましょう。詳しくは依頼の契約・利用規約で決めておくべきことで解説しています。
ステップ4:支払いを受ける(先払いの場合)
個人からの依頼では、先払いにしているクリエイターが多くいます。制作後の未払いを防げるためです。
先払い個人からの依頼に
- 入金を確認してから制作する
- 未払いのリスクがない
後払い企業との取引で一般的
- 納品後に支払ってもらう
- 支払期日を記録して、入金を確認する
分割大きな案件に
- 着手時に半額、納品時に残りの半額 など
企業との取引は後払い(月末締め・翌月末払いなど)が一般的です。その場合は、支払期日をしっかり記録しておきましょう。
ステップ5:制作する(途中確認をはさむ)
いきなり完成品を出すのではなく、ラフ → 線画 → 完成 のように節目で確認してもらうと、大きな作り直しを防げます。修正回数は「ラフ段階で2回まで」のようにどの段階で何回までかを決めておくのがポイントです。
制作が遅れそうなときは、納期の前に早めに連絡しましょう。遅れの連絡が早いほど、信頼は落ちにくくなります。
ステップ6:納品する
納品時には次のことを伝えます。
- 納品データの一覧(ファイル名・形式・サイズ)
- ダウンロードURLと有効期限(ファイル転送サービスを使う場合)
- 使い方のルールの再確認(クレジット表記の有無など)
- 後払いの場合は、請求書と支払期日
本日、ご依頼のアイコンを納品いたします。
- icon_1000px.png(1000×1000px)
- icon_400px.png(400×400px)
ダウンロードURL:(URL)※○月○日まで有効です
ご確認のうえ、問題がなければお知らせください。 このたびはご依頼いただき、本当にありがとうございました。
ステップ7:入金を確認してお礼を伝える
後払いの場合は、支払期日に入金されているかを必ず確認します。入金の確認漏れは、個人で活動しているクリエイターにとても多い失敗です。案件が増えるほど「どれが入金済みで、どれがまだか」がわからなくなります。
入金を確認したら、短くお礼を伝えましょう。ここで丁寧にやりとりしておくと、次の依頼(リピート)につながりやすくなります。
万が一支払いが遅れたときの対応は、報酬の支払いが遅れたときの対処法にまとめています。
よくあるトラブルと防ぎ方
| トラブル | 防ぎ方 |
|---|---|
| 修正が終わらない | 修正の回数と、どの段階まで直せるかを最初に決める |
| 入金されない | 個人からの依頼は先払いにする。後払いは支払期日を書面に残す |
| 想定外の使い方をされた | 用途と、使ってよい範囲を見積もりの段階で明記する |
| 連絡が途絶えた | 返信の期限を決め、期限を過ぎたら取り下げる旨を伝えておく |
| 依頼が重なって納期に遅れた | 受けている案件と納期を一覧にして、受けられる量を把握する |
依頼が増えてきたら「案件管理」を仕組みにしよう
依頼が月に数件のうちは、メモ帳やスプレッドシートでも十分に管理できます。けれど、個人の依頼と企業案件が並行したり、DM・メール・依頼サイトから同時に連絡が来たりするようになると、
- どの案件が今どの段階か
- 納期・支払期日が近いのはどれか
- 今月いくら受注して、いくら入金されたか
が一目でわからなくなってきます。管理のコツはフリーランスクリエイターの案件管理入門で詳しく紹介しています。
Citrushub CRM は、こうした依頼の管理をクリエイター向けにシンプルにしたツールです。「相談中 → 見積中 → 制作中 → 納品済み → 入金済み」という工程ごとに案件を並べ、納期や支払期日を過ぎたものはダッシュボードの最初の画面でお知らせします。Citrushub Siteの問い合わせフォームに届いた依頼は、自動で案件として登録されます。進行中の案件20件までは無料で使えます。
まとめ
- 依頼を受ける前に「受ける範囲」「料金と納期の目安」「ご依頼の前に」ページを用意する
- 流れは「問い合わせ → 見積もり → 受注 → 支払い → 制作 → 納品 → 入金確認」の7ステップ
- 条件(金額・納期・修正回数・使ってよい範囲・支払い)は必ず文字で残す
- 個人からの依頼は先払い、企業からの依頼は支払期日の記録と入金確認を忘れずに
流れが決まっていれば、依頼はこわいものではありません。自分に合った形に少しずつ整えていきましょう。

